第101回「「世界をどう定義するか」という問いが変えたもの」越田まなみさん(NUCBビジネススクールEMBA/(株)アシックス)

1. 藤岡先生との出会い

藤岡先生との出会いは、2025年1月、NUCBビジネススクールの講義「Leading Global Business」でした。物腰柔らかな佇まいとは対照的に、複雑な事象の本質を鮮やかに説かれる先生の講義は圧巻で深く惹きこまれました。わずか3日間の集中講義でありながら、まるで1年間師事し続けたかのような、濃密な充足感を覚えたことを今でも鮮明に記憶しています。

スポーツメーカーで研究開発戦略に携わっている私は、「欧米が主要市場、アジアが生産拠点」という構図に基づき、日本企業という一方向の視点からのみグローバル製造を捉えていました。そんな私の戦略立案における思考の土台を根本から塗り替えたのが、講義なかで藤岡先生が提示された「日本がアジアを選択するのではなく、アジアから見て日本が選択される存在か」というコペルニクス的転換視点です。視野の広狭を自在に操り、世界との相関の中で自社を相対化する能力こそが、グローバル競争の起点である――。藤岡先生からのこの学びは、今も私の実務における揺るぎない指針となっています。

2.感銘を受けた言葉

「どこに世界を定義するかによって、その人の思考や行動、ひいては人生そのものが大きく変わる」

視座の転換について説かれた際、藤岡先生が発せられたこの言葉は、実務のみならず私の生き方そのものに「はっ」とするような鮮烈な気づきをもたらしました。対象や環境の、これまで見落としていた側面が鮮明に浮き上がり、同時に新たな意味が多層的に立ち現れてくるような、これまでの視界が書き換えられる感覚を覚えたものでした。

捉え方が変われば思考は拡張し、自ずと行動も変化します。特に、この「視点のチャンネル」を意図的に切り替える思考法を習得できたことは、私にとって大きな転換点となりました。偶然の閃きに頼るのではなく、過去の知見と未来の予測を縦横無尽に掛け合わせ、意外性に富む戦略的な提案を「意図的」に導き出す。そのための手応えを掴むことができたのは、まさにこの瞬間でした。

3. 今後の決意

これまで私が携わってきたスポーツ工学における「人間中心」の追求は、ともすれば競技アスリートや、既存の成功体験という限定的なスコープの中での深化に留まっていたかもしれません。しかし、タイの地で目にした多様な熱量や社会の変容は、私が定義していた「人間」がいかに狭義であったかを痛感させました。

今後の私の決意は、この理念を真の意味でのグローバル・フィットへと拡張させることです。製品を世界へ届けることではなく、研究開発の出発点となる「人間の定義」そのものを、世界の多様な身体特性、生活文化、そして現地の切実なニーズへと広げていくプロセスに他なりません。

日本の企業人として私が果たせる貢献は、日本が誇る緻密なものづくりの精神を、この拡張された世界定義の中に正しく再配置することです。藤岡先生から学んだ「視野の広狭を自在に往復する思考力」を武器に、現地の文脈を深く探索し、自社の技術資産を適応・進化させていくことことで、世界から選ばれる日本であり続けるための研究開発戦略を導いていきたいと決意をあらたにしています。


紫藤会/SHITOKAI

学問は人の幸福に資するものではなくてはならない。 幸福とは何か?美しさとは何か? 経営学の可能性を信じて御茶ノ水から世界へ。

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