第88回「地図ではなく、コンパスを持って、旅に出ること」篠原智昭さん((株)コーチ・エィ)
■藤岡先生との出会い
藤岡先生との出会いは、2019年9月にNUCBビジネススクールに私が入学し、入学直後の2番目の講義として藤岡先生の「Leading Global Business」を受講したことがきっかけでした。私は藤岡先生の「真・善・美」を追求するようなその講義に深く深く衝撃を受け、その後の2年間の学修の中でも、最も記憶に残る講義となりました。経営というものは、所詮は弱肉強食で、打ち負かされる世界であり、幸福になる人の影に不幸になる人の存在があるのか(私はそのような世界を悲観していました)と捉えていた私にとって、「学問は人の幸福に資するもの」と、経営学に幸福を叫ぶ藤岡先生の言葉には、心の奥に刺さっていたつかえが取れるような、熱い思いを感じました。
私は、自分自身の娘の難病の治療薬を開発するために、製薬ベンチャーの起業・経営に参画したという稀有な経験の中で仕事をしていたことから、有り難いことに2020年初めの紫藤会での発表にお声かけを頂いていましたが、COVID-19のパンデミックにより延期となっていました。この度、3年半越しに2023年に再びお声かけを頂くことができ、「いのちと経営学」について会員の皆様と考える機会を頂けましたこと、本当に嬉しく思っています。
■ 感銘を受けた言葉
「地図ではなく、コンパスを持って、旅に出ること」、先生が講義の中で言われた言葉です。他人が示した正解ではなく、自分の「価値軸」を持って世界を観ること、そして自分の足で世界を切り拓いていくこと、と私は捉えました。旅に出る、という表現に、予測不可能な世界の中でも自らの信念とそして好奇心を持って進むという、冒険心をくすぐられたことを覚えています。
同じく、先生の講義の中の「リベラルアーツ教育」という項目で、『何が正しいかを自分自身に問い、「人は何のために生きるのか」、「幸せとは何か」、「利益と環境とどちらが大切なのか」といった二律背反的な難しい問いに対して、自分なりの意見を伝えることができる能力』という言葉がありました。私は現在コーチングの仕事をしていますが、自分自身に問うこと、自分を知ること、自分の思いを言語化することは、すべてのコーチングの第一歩でもあります。これらがリベラルアーツという生きる力に繋がっていくこと、これらを共に発見し創出していくことは「幸福」に資するということは、私の中の価値観として一つにつながり、先生の言葉からエネルギーを頂いています。
■ 今後の決意
私は、多くの人が自分の人生のオーナーシップを自分自身に取り戻し、自分のコンパスを持って旅に出られるようになって欲しい、そのためのお手伝いがしたいと思っています。それが、私の人生の中で成し遂げたいことの一つです。
MBAの学びに触れた私ではありますが、人間は論理だけで動くものではなく、感情で動くもの、そしてかかわりの中で生きているものであることを実感しています。ビジネスにおいても、日常の場面でも、自分の幸せのために何ができるだろうか、他人の幸せのために何ができるだろうかーそのような問いをより多くの人と共有し、そして旅に出る一歩を踏み出す勇気を持てるように関わっていきたい、それが私の決意です。
藤岡先生が、経営学にも源流には哲学や社会学など多くの学問があり、それを忘れてはいけないと強調されていらっしゃいましたが、私自身、最近は哲学や心理学などを学ぶことが以前にも増して楽しくなってきました。紫藤会が、先生と会員の皆様とともに、今後も豊かな学びの場となっていきますこと、共に探求する冒険の場でありますこと、心より願っています。
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