第86回「多くの人は、自分が見たいと思うものしか見ていない。見ようとしない」梅野雅子さん(㈱ユニクロ勤務)

■藤岡先生との出会い

2020年4月明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科(以下MBS)に入学。

秋学期開講「戦略とマネジメント・コントロール・システム」での講義が藤岡先生との出会いとなりました。諸先輩方より、藤岡先生はすごい!と伺っていたものの、私自身には新興国やアジア、戦略の構想といったものに研究意識が向いておらず、極度の緊張と不安を抱きつつ、最前列に席を取りました。穏やかなトーンで進められる講義の視点の深さと広さに、一瞬にして、のめり込み、一言も聞き漏らすまいと必死に思考を高速回転させました。春学期に学んだマネジメント・マーケティング・アカウンティング等の基礎科目が、経営という視座を「核」にして、バラバラな点から面へと一気に広がり、知識が繋がり視野が広がることに興奮し、感動いたしました。この不確実な社会環境において、企業は、また私自身はどう舵を取り前進すべきなのか。目前の「現象」に振り回されず、物事の「本質」はどこにあるのか。その見極めには、「理論と実践」の往復であり、学びの必要性と手ごたえ、視野の拡がりと膨らみだと、藤岡先生の講義を通じて確信致しました。その後「新興国市場のマネジメント」12月にはタイでの「グローバル・ビジネス研究」を履修しました。アジアにおける日本の現状とタイの活力をまざまざと実感し、日本国内が沈静している現実を再認識致しました。超高齢化は日本の国力低下をもたらす要因である一方で、アジア視点を持つことで、高齢化の先頭を走る日本は世界に提供できるノウハウを数多く持ち、国力を回復させる一手に得る可能性が見えてきます。この履修を通じ、日本国内だけではなく、アジアでの立ち位置とアジアから世界に対して何を提供し得るのかの視点を実感することが出来ました。視点が大きく膨らみました。

 藤岡先生には修士論文の副査を快諾して頂き、ご指導を頂く貴重な機会を得ることができました。研究方向が「現象」に振り回されていないか、研究の切り口が「鈍ら」でないか。また、この先求められるであろう「価値共創」とは、どのような世界なのか。その実現にむけ、理論形成上は何が求められ、実務上では何が障害となっているのか。その障害を発見するための研究方法の是非を問われつつ、多くの示唆を頂くことで、新たな視点を見出し、この研究を一段一段掘り下げ、意義あるものへと昇華させ得たと思っております。


■ 感銘を受けた言葉

「多くの人は、自分が見たいと思うものしか見ていない。見ようとしない」

講義中に、幾度となく藤岡先生が口にされた言葉です。

会社が目指す方向に対して、私はその本質はどこにあるか問い、実現に向け、優先順位をつけ実行している最中であったため、思わず「えっ?」と発してしまいました。怖い言葉だと思いました。現象に振り回されずに本質を掴む努力をしておりました。しかし、私が本質と思っていたものは、己のフィルターによるものではないのか。また周囲のスタッフに見せるべきと信じていたものは、単に私が見たいものではないのか。足元からひっくり返る思いとなり、今なお、多くの問いを自分に投げ続けています。立止っている時間はありません。自分が見たいものに歪んでいないか、見落としているものはないか、冷静な視点を持ち前進することの必要性をこの言葉より得ました。


■ 今後の決意

MBSでの学びは、私にとって大きな糧となりました。藤岡先生をはじめ多くの素晴らしい先生方や同期、学友に出会い、そしてまた家族や職場の仲間に支えられ、ありがとう、感謝の気持ちでいっぱいです。この感謝を社会に還元することが自分の使命だと思っております。MBS卒業後は、今まで携わってきた流通小売業から大きく転身することを決意致しました。

一つ目は、身近な社会課題への取組みです。近年のコロナ禍により加速化した高齢者の自宅引きこもりは、それに伴い体力が減退するため、ますます活動範囲を狭める問題を発生させております。私は畑という「場」を通じて、高齢者や地域住民が「気軽に」「自らの意思」で立ち寄り参加することで、体力維持とそれぞれが社会との繋がりを実感できる仕組みの形成を目指しております。

二つ目は、MBAホルダーとしての学んだ知識を実践する場として、エネルギー産業における機械工業製品に携わる職務を得ました。

この二つの転身は、今までの職務経験のみでは前進できない多くの壁があります。しかし、産業は異なれど、そこに関わる人たちが‘‘「自ら」一歩踏み出すためには、どんな仕組みを形成したら良いのか‘‘から、本質を見誤らずに追求することで、進むべき道が見えてくると信じております。進めば進むほど判断に迷い、再び学びに立ち返り、学べば学ぶほど不知を知る。不知は恥ではなく、新たな扉を開いた証。分からないときは再び学べるMBSという場があり、藤岡先生をはじめ、多くの諸先輩方とつながりを持てる紫藤会があることにとても感謝しております。

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